SUPER STUDENTS

DREAMLAND

石田洋英
HIROHIDE ISHIDA
大森由依
YUI OMORI
@hiro_ishi_account
@yuitmarumi
—— 撮影を終えての感想をお聞かせください。
Y

想像していたのとはまったく違って、ゆっくりとかのんびりとか、マイペースとか、そんな言葉が本当に存在していなかったですね。自分のペースを捨てて臨機応変に動かないと、すべてのスケジュールがズレていく。

ワインディングをするときのように、「次はどのロットを取って、どのタイミングでペーパーを取って……」というように先読みしていないと、手が止まってスムーズに仕事が進まないんだなと実感して、「もっと練習しておけばよかった」と思いました。

H

終わってみると、思ったよりも長いようであっという間でした。

限られた時間のなかで準備をしなければならなかったので、毎晩遅くまで残り、毎朝早く行って作品制作をしてきました。その最中では「長かったな〜」「また今日もか〜」と思ったときもありましたが、終わってみると、すごいやり切った感じがしますし、走り切ったので、いまは達成感でいっぱいでいい気持ちです。

—— 写真の作品を見てどう感じましたか。
Y

教室で作ってきた作品と、撮影された作品が違って見えて、なんだか不思議でした。撮影するとこんなに色が変わるんだと思いましたし、プロのメイクさんたちは、光が当たったときのことも考えて作っているから、すごい頭を使っているんだなあと思いました。試行錯誤して作った蝶々のパーツは、針金とスズランテープでできているのですが、けっこう脆いので破れたりもするんです。でも写真で見ると、そんなのはまったく気にならないですし、職人さんが作ったみたいに素晴らしいものに写っていたので、めっちゃくちゃうれしかったです。

H

自分たちの目で見ているものと、カメラ越しで写ったものが、けっこう違うように見えて、いいほうに表していただいたと思います。自分たちのなかでは「ちょっと色がくすんでいるかな」と思った箇所も、写真を見るとすごくきれいに写っている。

きれいに撮っていただいて本当にうれしいですし、レスリーさんのおかげで、自分たちの作品をより理想の形に近づけていただきました。

—— おふたりでどのような役割分担をされたのですか。
Y

私は塗ったり描いたり、くっつけたりといった作業が得意なのですが、組み立てたり、平面を立体に起こすことが苦手で、そこで作業が止まってしまうんです。そこをうまい具合に石田くんが助けてくれました。練習中も、私はほぼ毎日のようにパニクっていたのですが、石田くんが整理してくれて、ふたりで協力してやってきました。石田くんはすごく手が早くて作業効率もいいので、「石田くんの言うとおりに動きます」という感じでしたね。

H

本番では、僕は彼女にメイクを任せっきりで、どちらかというとヘアをやるという感じで担当分けをしました。彼女は色彩感覚がすごく強いので、色のアドバイスを聞きながら実際に僕が作ったのですが、いい感じのバランスでできたと思います。

—— コンセプトはパーティーで、『不思議の国のアリス』のティーパーティーの世界観を表したということですが、これを選んだ理由と、この作品で表したかった思いを聞かせてください。
Y

学生のときに吹奏楽で「celebration」という曲を演奏したことがあるのですが、その曲を思い出して、海外の華やかなパーティーがいいなと直感で決めました。

そこからパーティーについて考えを深めていったら、たくさん色を使っているなと思ったんです。さらにそこにファンタジーの要素を加えていったら、ディズニーのアリスが思い浮かびました。「不思議の国のアリス」の世界観って、ぐねぐねしていて、お花が喋るし、変なものはいるし……というぐちゃくちゃな感じですよね。そこからぐねぐねさせた髪の毛を思い浮かべて、最初に描いた落書きみたいなものが、クラッカーなんです。

H

今回のデザインは、基本はすべて大森さんが考えてくれていたので、最初の打ち合わせのときに、端っこに描いていたラフなメモ書きみたいなものから、具体的にどんどん起こしていった感じです。そもそもこのイベントは、大森さんに誘っていただいたんですよ。

ただ、それがけっこう締め切りぎりぎりの時期で、「急いでお互いに1個ずつ考えよう」という感じだったのですが、そのときに彼女が出したのがこのコンセプトでした。

僕は、モデルさんのきれいさを引き出す感じのものにしたくて、この作品とは正反対なものを考えていたのですが、彼女のデザインも本当にいいと思ったから、こっちでいくことになりました。

—— この撮影を経験して、どういう学びがありましたか。
H

今回の企画はみんなが参加できるものでもないですし、オーディションで選ばれた人しか出られない貴重な経験ですよね。僕はずっと部活をやっていて競争ごとに燃えるタイプなので、募集内容を見たとき、世界的に有名なフォトグラファーが撮ってくれる貴重な企画ですし、すごい面白そう、参加したいなと思いました。ただ、最初は「やってみたいな」という軽い気持ちもあったのですが、準備期間も短くかなり大変だったので、途中で気持ちを切り替えましたね。

Y

私も、あまりにも大変だったので、途中から申し訳なさが出てきてしまったこともありました。製作中はお互いにイライラして、大泣きしたこともありましたし……。私は言葉のひとつひとつを真に受けてしまうタイプなので、次の日まで石田くんの一言を持ち越してしまったこともありました。

H

制作中は、お互いに本気でムカついたタイミングも何回かあったと思います。とくに1〜2パターン目のウィッグについては最後の最後までご指摘があり、改善するために前日も19時近くまで学校に残ってできるところまでやっていたのですが、当日の朝、撮影までに仕上げるという形になってしまいました。だから当日、現場に来てから、本当にぎりぎりで仕上げた感じですね。たぶんどのチームも直前にご指摘があって、みんなそこからがキツかったのかなと思います。

Y

なにより、前日と当日がいちばん大変でしたが、間に合ったことはひたすら先生に感謝です。先生は偉大だなと思いましたし、ヤマノってすごいと思いました。ただ、ご指摘をいただいて直していくうちに、どんどん私たちがやってきた形跡が消えていくのが悲しくて、悔しくて……。どの先生の意見を取り入れて私たちの意見とうまくミックスさせていくか、そのバランスを取るのも難しかったです。

ただ、人気のモデルさんを使った私たちの作品をレスリーさんが撮ってくださって、山野学苑の名前でフリーペーパーとして残るとなると、それなりのクオリティが必要になりますし、ご指摘も受け入れるというか、流れに沿って続けてきました。

H

僕は撮っていただいた写真を見て、ウィッグやメイクとモデルさんの相性もよかったですし、結果的によかったと思います。だから満足していますが、指摘をいただいて直す前の作品ではどう写ったのかなというのも、正直気になるところではあります。ただ、彼女も言っていますが、「SUPER BIDO」は学校からいただいた場であり、僕たちだけの作品を作りたいのなら、個人で出せばいいという話ですよね。ご指摘をいただいたことによってこの作品ができたので、僕はよかったかなと思っています。

—— ここからは作品以外のことについてうかがいます。美容の道に進もうと思ったきっかけは何ですか。
H

僕は父親が美容師だったこともあり、小さいときから美容師に憧れがあったので、高校3年の夏くらいのタイミングで進路を決めるとき、すぐに美容専門学校に行きたかったんです。

ただ、父から、「美容師は接客業なので、いろいろなお客様と会話をするにはさまざまな知識やある程度の教養が必要。コミュニケーション能力がないとお客さんはついてこないよ」という話があったのです。

そのとき僕は指定校推薦で大学に行ける成績だったので、「本当にやりたかったら、大学に行ってからでも遅くないんじゃない? もし大学の4年間で美容以外にやりたいことが見つかればそっちに行ってもいい。4年間なんて全然遅くないから、大学に行っていろいろな勉強をしてきたほうがいいと思う」と言われまして。

現役の美容師である父がそう言っているわけだから、そのときはそうなのかなと思って大学に行きましたが、就活のときに、やっぱり美容のことがどうしても捨てきれなかったんです。

美容をやりたいという気持ちと、周りに迷惑をかけたくないという気持ちがありましたが、最終的に家族と話したとき「やりたいんだったら美容のほうに行けば」と言ってくれたので、こちらに進みました。

4年間あいてしまいましたが、やっと美容の道に進む決心がついた感じですね。大学はバリバリの理系で、化学のなかの「無機化学」を専攻しました。美容の勉強とは、香粧品化学などで若干かぶっている範囲もあるので、「あ、これ知ってる話だな」というときもたまにあります。

Y

私も高校3年生の頃に美容に興味があったんです。

でも、幼稚園の頃から絵画教室とかに通っていたこともあり、絵を描くのがだんだん好きになっていって、女子美術大学に進学しました。そこでは「ファッションテキスタイル表現領域」ということを学んだのですが、とくにデザイナーになりたいわけでもなく、パターンして切って縫ってということはやりたくないなと思ったんですよね。

ただ、私が学んだアートコースでは、感情などを形や色で表現することが多く、それがすごく楽しかったのです。

そこで、高校3年生の頃に思っていた美容の道──メイクアップアーティストになりたかったので──の相談を母にしたら、「コロナ禍でもあるし無理に就職しなくてもいいんじゃないか」という話になりまして、それから自分で専門学校を探して山野美容専門学校に入学しました。

—— たくさんの学校のなかから山野美容専門学校を選んだのはなぜですか。
H

最初に父親から勧められたんです。

僕は神奈川県出身ですが、日本における美容の中心は、表参道、原宿、渋谷などの都心に集まっています。就職のことを考えると、都内の美容学校のほうが都心のサロンさんに就きやすいということで考えました。正直、東京の美容学校しか選択肢にはなかったんですが、そのなかでもヤマノは歴史がありますよね。いろいろなところにオープンキャンパスでうかがったんですが、ヤマノはダントツに校舎がきれいでしたし、業界のネットワークの高さがある。ここだったら快適に学べるだろうなと思ってヤマノを選択しました。

Y

私もいろいろ見に行ったなかで、ヤマノがいちばん環境もいいし、カリキュラムもいい。なによりのびのびと自分を表現できるかなと思いました。

天井が高いところで勉強すると頭がよくなるという話がありますが、環境のいい広い場所で学んだら、吸収できることもそのぶん多いんじゃないかと思って入学を決めました。

—— 学生生活の楽しいところ、苦しいところはどんなところですか。
Y

いまヤマノに通っていて、人って褒められると本当に伸びるんだなとすごく思っています。私はクラスでひとりだけ23歳なんですよ。

みんな4歳年下なんですが、やさしいし気がきくし、「なんでそこに気づくの?」ということにパッと気づいて行動できる。

本当に大人だなと思いますし、私が18〜19歳の頃は与えられた課題をただクリアしているだけで、周りの人の気持ちなんてたいして考えてなかったなと、日常生活で思ったりもしています。

ただ、年下の人たちと関わるのは楽しいけれど、言葉遣いなどで難しい面もあります。

私は年齢が上でいろいろなことを体験しているから「お姉さん」の立場になりがちですが、そもそもマイペースだし、今回も石田くんにたくさん注意されながらやってきたんですね。

年上だからなんでもできるわけじゃないということをわかってくれる友だちが、今回はできたなと思っています。

H

僕もどちらかというとクラスでは静かなほうなんですが、座学も技術も、習ったことを結果や点数で褒めていただけたとき、自分の成長を感じて楽しいです。成長が結果に出て自覚できることで、わくわくすることが多いかもしれないですね。

でもその半面、やはり周りからは4年間遅れているので、将来を考えたときに不安なところも多少はあります。くだらないプライドかもしれませんが、僕のなかには「負けたくない」という気持ちがすごいあるんです。

同学年では18〜19歳の子が多いなかで、4年間ほかのことを勉強してきたからには、みんなから頼られる存在でいたいなと思っていて、そこでちょっとがんばりすぎたり、考えすぎてしまって、自分を追い詰めて「なんかつらいな……」と思うときもあります。みんなから「できるでしょ」と思われるポジションにいるのは、たまにつらいかなと思うところでもあり、いいところでもあり、という感じです。

—— 将来の夢は何ですか。
M

将来は、高いレベルの技術で、常にお客様を笑顔にできるような美容師になりたいと思っています。それにプラスして目指しているのが、ずっと生涯、動けなくなるまで現役でいたいということ。

僕がリスペクトしているのは川島文夫先生なんですが、ずっと前線で走って、いまでもサロンに立っていらっしゃる。川島先生みたいな、偉大な美容師になれるといいなと思っています。

Y

私はできればブライダル専属のヘアメイクさんになりたいです。

いまもブライダル関係でアルバイトをしているのですが、全然知らない人の結婚式でもめちゃ泣けるんですよ。

そういう感情が生まれる背景には、ヘアメイクさんや衣装さん、サービスのスタッフさんとか、いろいろな方がいる。表を華やかにする裏方のお仕事は、すごく魅力的だなと思いますし、中学生の頃から裏で活躍して、人を笑顔にできる人に興味があったので、そういうお仕事に就きたいなと思っています。

「SUPER BIDO」は、初代山野愛子が提唱した「美道5大原則」の理念にのっとり、美容の理論と実践を通して、変わりゆく多様な文化の足跡を残すべく立ち上げたプロジェクトです。世界で活躍するアーティスト、山野学苑OBや在校生の作品のほか、同学苑で行っているさまざまな取り組みをご紹介しています。また、各界で輝くさまざまな人々を「美容」というキーワードで繋ぎ、盛り立てていくことで、美容業界の発展に貢献することを目的としております。

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