SUPER PRO

INTERVIEW WITH
yUKI for Loopblue.lnc(M0)

yUKI for Loopblue.lnc(M0)
── 今回のテーマは「PINK」ですが、このテーマをどのように作品に込められましたか。

私は、80年代のパンクスの時代が青春時代で、すごく影響を受けたんですね。
もともとイギリスが好きだったのですが、私のいちばんのベースになるところは80年代のパンクルックなのかなと。
そこからファッションがすごく好きになったんです。
音楽もそうですし、すべての始まりがここからだったということもあって、かわいらしいピンクではなく、辛口のパンキッシュなピンクを目指しました。
それを、日本人の3人のモデルによって三様に表したいと思ったのが、第1のインスピレーションです。

パンクを表現するにあたって、ここまでやり切れる撮影はあまりないと思うので、スタッフの3人(Hair、SpecialMakeUp、Nail)とのセッションで、力を出し合うことを考えました。
なので、本当はスタイリストさんはなしでやろうと思っていたのですが、レスリーとのミーティングで「衣装があったほうがいいんじゃないか」と提案されたんですね。「チェーンなどの小物やアクセサリー類も入れることによって、もっとバランスがよくなるんじゃないか」ということで、この方向になりました。

今回は本当に、みんながそれぞれにイメージを持ち込んだ作品なんです。
事前に私のイメージを伝えたうえで、「みんなが考えるイメージを持ってきて」という感じだったので。
スタッフの3人とも、私が意図していたことを理解してくれましたし、そもそも全員の根源に、同じイメージがあったのだと思います。
キャスティングをするときに、そういうものが根源にある人をモデルとして選ばせていただいたので。
モデルの3人がそれぞれの持ち味というか、パンキッシュな気持ち・思いなどの全部を出してくれて、それぞれ調和していてよかったです。
キャラクターが合っている気がしましたね。

そして、眉毛や鼻などに特殊メイクを少し取り入れました。
いまのファッションには、非現実的なものがミックスされているような気がするんですね。
リアルと言いながらも、私はリアルに少し飽きてしまっていたのもあります。

また、いままでの「SUPER BIDO」では、衣装と合わせたファッションの観点からの作品が多い印象があったので、私は違うアプローチをしたいと思っていました。
ですから、今回はビューティでいこうと思い、これまでは要素として入っていなかったネイルも入れていただきました。

王道は、なんでもかっこいいと思うんですよね。
でも、王道をそのままではなく、いまふうにアレンジしたのが今回の作品だったと思っています。
80年代はみんなそうやって作品を作っていましたが、まさにそのときを走ってきたからこそできた作品かなと思います。

── では、ひとつずつ振り返っていただいて、1カット目の作品はどういったイメージだったのでしょうか。

私からレスリーにお願いしたのは、バストアップでやりたいということ。
1カット目の萌菜ちゃんの作品は縦のイメージの写真がいいと思っていたので、長さのあるヘアにして、「CHALLENGE」というメッセージを顔に描きました。
文字が全部見えなくても、なんとなく書かれてあることがわかればいいかなと思って、目の下に入れたんです。撮影の前夜にパッと浮かんだのでこの言葉にしたのですが、「CHALLENGE」は山野美容専門学校で提唱されている「4つの”C”」のうちのひとつなんですってね。びっくりしました。

私には、若い人たちにもっとどんどんチャレンジしてもらいたいという思いが、強くあるんです。
同時に、チャレンジする気持ちは、いくつになっても変わらないとも思うんですよね。
だから、学生だけではなく、さまざまな年代の人たちに向けてのメッセージでもあります。
人間は死ぬまでチャレンジする心を持つべきだと思いますし、そこから生まれることがたくさんある。そういう意味を込めての1カット目でした。

そしてこの作品では、額に鋲を打って立体感を出しました。
小物も探しましたね。
萌菜ちゃんとは、よく撮影もさせてもらっていますし、ショーも一緒だったりしているので、いちばんよく仕事をしているんです。
作るときには、「彼女はこういう感じのメイクでいきたいな」と、頭のなかにいちばんはじめに浮かんできました。

── 文字に沿うように入ったピンクのチークからも、「CHALLENGE」というパワーを感じますね。2カット目の作品はいかがでしょう。

2カット目のモデルの紅巴ちゃんは、すごくかっこいいんですよね。
彼女がいちばんパンキッシュかなと思います。
もともと、そういう要素を持っている人なんですね。
眉毛もそのままですし。
彼女はこれが素の感じなので、説明しなくても逆に教えてくれるくらい。
鼻に輪を通すのも「私、やっていたからできるわよ」という感じでしたし、どうやったらいちばんかっこよく見えるかということもわかっていらしたので、撮影もスムーズでやりやすかったです。

私は今回の作品のなかに、どうしてもモヒカンのものを1個入れたかったんです。
モヒカンは、パンクの象徴的な要素なので。
ですから、このモヒカンの部分、髪の毛でピンクを表現してもらいました。
また、ネイルもピンクと黒で揃えてもらい、長い爪に輪っかを刺して、チェーンでつなげてもらいました。ここもパンキッシュらしさが出たと思います。

紅巴ちゃんに関しては、全体的に輪っかをモチーフに作った感じです。
1カット目の萌菜ちゃんの作品は、トンガリがモチーフでした。
バストアップの写真では見えると思うのですが、ブラもトンガリがついたものをつけていただいています。
なんとなく、3人が3人とも違うようにディティールも変えているんです。
ですから、それぞれ違うキャラクターを作りましたけど、どこか揃っているというか、バランスがいいんですね。

── 3カット目はまた、雰囲気がまったく違いますね。
TIARAちゃんもめちゃくちゃかっこよかったですよね。 彼女自身がInstagramやYouTubeをやっていたりしていて、演出をするのが得意なんじゃないかなと思います。 この撮影では、マン・レイ風であったり、山口小夜子風であったりと、いろいろなイメージが出てきました。たぶん表現の仕方が上手なんだなと思います。 このカットでは、目のうえに特殊メイクでピアスをしているように見せているんですが、これがすごく効いている気がします。 眉毛があると、こういうふうには作れないと思うのですが、これがあったおかげで、すべてがかっこよくできたと思います。
── ありがとうございます。今回「SUPER BIDO」にはどのようなお気持ちでご参加いただいたのでしょうか。

好きなことをやって表現するということ、自分の「好き」を表現して仲間を作ることの素晴らしさを学生さんたちに伝えたいと思っていました。

ひとつになることって、ものすごく楽しいことじゃないですか。

私も経験してきましたが、卒業してしまったら、そうではないことをたくさん経験されると思うんですね。

でも今回、私自身が原点に立ち返ることで、本当にワクワクしましたし、楽しくやらせていただきました。

大人の世界はいろいろあるけれど、「自分たちが楽しんでやることから始まるんだよ」というメッセージを、作品に込めたつもりです。

撮影に関わった全員に「楽しかった」と思ってもらえるような作品を作っていきたいという気持ちを、メッセージとしてお伝えしたいです。

それが、いちばん重要なことだと思っていますから。

── 今回は、yUKIさんにとって原点回帰となるような作品を作っていただいたということですね。

そうです。
日本に帰ってきて25年経つのですが、日本で仕事を始めたとき、「これで本当にいいのかな?」「ここは私を出してはいけないところだな」と感じる場面がありました。
そういうときは、やはり作品がブレてしまうんですね。
でも、私が本当に好きなことをやったときは、そこから物事が動いていく。
そのことに気づいて、原点に立ち返るということはとても大切だと思ったのです。
学生のみなさんも、それぞれに希望があってこの世界に入ってこられていると思いますので、その気持ちを忘れずにやっていって欲しいです。
仲間もたくさんいると思いますし、すごく大切なことなので、今回の撮影では、そのことを訴えたいなと思いました。

── ありがとうございます。それでは、yUKIさんのこれまでの歩みを教えていただけますか。

最初にもお伝えしたように、私は高校生のときからロンドンが好きで、音楽もパンクが好きで……というところから始まっているのですが、当時はお金が続かず、ロンドンに行っても、ただの旅行で終わっていたんです。
でも、ボーイフレンドができてから、本気で「住めるだけ住んでみよう」と思うようになりました。
それが、25歳くらいの頃かな。そのとき、パリの人たちに「何がしたいの?」「本当に好きなことをやったほうがいいよ」と言われ、「メイクだ!」と思ったんですね。

とはいえ、当時の日本はヘアメイクの世界でしたし、メイク1本でやっている人なんていなかったので、「ここでやっちゃえ!」と決意し、パリで始めることに決めたんです。
そうして動き始めたら、周りのみんなが「誰か知り合いにメイクの仕事を紹介できる人はいない?」と話をしてくれて、メイクのアシスタントをしていた方を紹介してもらい、手伝わせてもらって……という感じであれよあれよという間に進んでいきました。

私が通っていた「CHIRISTIAN CHAUVEAU」というフランスの学校は、先生方がみんなプロフェッショナルだったんです。
映画やショー、サーカス、オペラ座などの現場で仕事をしている人が教えに来てくれて、私たちは「Stage(スタージュ)」という見習いとして、現場で学ぶことができたんですね。
それが本当に素晴らしい経験になりました。映画の現場も見せてもらいましたし、私はショーがやりたかったので、ショーの現場にも入らせてもらいました。
特殊メイクを希望している人たちはその技術を学んでいましたし。
授業でも習うのですが、現場に行けることがとても楽しかったし、すごく経験になりました。
ですからいま学生の人たちも、そういうチャンスがあるなら、どんどんやったほうがいいと思います。
そこから学ぶことはたくさんありますから。

私が通っていた学校は小さかったうえに、日本人が私ひとりだったのもあって、けっこう優遇されていたようにも思います。
ひとりだったからこそ、「フランス語をとにかく勉強しなきゃ」という気持ちになりましたし、「勉強しないと」という意識が高かったですね。

── その後、パリでメイクアップアーティストとしての経験を積み、帰国されたそうですが、当時の日本のメイクの世界は、欧米のものとは違いましたか?

めちゃめちゃ違いましたね。
たとえば欧米では、アシスタントであろうと現場に入ったら、ひとりのメイクアップアーティストです。
でも日本では、「手伝っているだけだから」「アシスタントだから」「荷物しか持てない立場だから」ということで、アシスタントさんがモデルさんに触れないということがよくありました。
そこにすごく違和感があったんです。

私は帰国した直後にファッションショーを行ったんですが、ひとりではできないので、アシスタントを3人入れたんですね。
そのうちのひとりはパリのメイク学校の後輩だと知ったので、「すぐやって!」と指示をして動いてもらったのですが、それについて「アシスタントを3人もつけて、もうメイクもやらせているよ」と、いろいろな人から非難を受けました。

日本には「一歩引く」という美学がありますが、アシスタントもメインのメイクアップアーティストと同じ立ち位置でいないとダメだと思うんです。
パリでメイクを始めた学生のとき、はじめての現場がオートクチュールのショーだったのですが、そのときからもう「はい、やってね」という感じでしたし、そのおかげで度胸もつきました。
失敗もたくさんありましたが、それが結局、自分のレベルアップにつながったんですね。
だから私は、アシスタントがちゃんと独り立ちできるかどうかは、メインになった人の責任だと思っています。
その子の将来を考えると、自分についてくれた瞬間から一緒にメイクをしていかないと。
でないと、そこから出て「はい、ひとりでやって」と言われても、無理なんじゃないかと思います。

そういう経験もありましたから、今回の撮影で手伝ってくれた特殊メイクの子は、私の9番目のアシスタントですが、いつも作品について「どう思う?」と意見を聞いているんです。
私もアシスタント時代から意見を聞かれましたし、そのときのやりとりが成長につながったから。
「自分のこともひとりのメイクアップアーティストとして見てくれている」と思えたことで、背中を押された感じがしました。
誰かの後ろにいるのではなく、横に並ぼうと思えましたし、「私もちゃんとやらなきゃ!」と意欲も湧きました。
だから、後ろから押してあげることは絶対に必要だなと思っています。

── ひとりの技術者として経験を重ねることで、プロになっていくということですね。では、さまざまな経験をされたうえで、いまのyUKIさんご自身の夢はありますか。

「BISOU」というブランドを立ち上げて、ブラシとコンシーラーを作っているのですが、これを世界に出していきたいし、もっと世界の人とつながっていきたいです。
子どもから大人まで、プロフェッショナルから一般の人まで、あらゆる方に使ってもらえるようなブランドにしたいですね。
よく「この商品のターゲットは?」と聞かれるのですが、年齢も国籍も関係なく、さまざまな人に使ってもらいたいと思っています。
そして、アース&フレンドリーブランドとして作っているのですが、地球にも自然にもやさしく循環できるものを作っていきたいです。
メイク用品にはさまざまなものがあって、添加物などで肌が荒れてしまったという人をたくさん見てきましたから、それを解消したい。
私がこれまで経験してきたことを、次の世代の人たちのために残していきたいんですね。
そういう気持ちがあればつながっていけると思っていますし、私のブランドのものを使って、世界でショーなどもやりたいです。
その辺は夢ですが、有言実行できるように、言っておかないと。

メイクを始めたときもそうでしたが、自分が「これをやる」と決めることが大事なんだと思います。
初代山野愛子さんの言葉にもありましたが、決めると願いは叶うんです。
夢は叶うためにあると思いますが、夢を決めて、言わないと叶わない。
夢を決めて口にすると、力を貸してくれる人たちが集まってきますから。
やってみて違うのなら、違う方向に行けばいいですし、好きなことも夢も、人生で何回変わってもいい。
ただ、やると決めたことを言葉にすることで道が開けていくと思いますし、私自身、それを続けていたら、いまに至ったという感じですしね。

── ありがとうございます。最後に、美容を志している若い人たちにメッセージをいただけますか。

撮影のときに、ヘアアーティストのてっちゃんが言っていたのですが、ものを作るのはテクニックではなく、センスなんですよね。
そのためにも、いい環境にいることがとても大切。
それでかなり変わってくると思います。
そして、信じる心。
自分を信じることですね。
自分に聞いてみて、「こうだな」と思ったことはやる。
「違うな」と思ったらやめる。
決断することは勇気がいりますが、違うと思いながらやり続けると心がつらくなってしまいますし、道を見極める目もとても大切です。
でも、自分を信じて、「これだ!」と思うことに入魂していけば、絶対にいいほうに行くと思います。そういう人は、類は友を呼ぶので、みんなで励まし合えますし。

この撮影では、すごく久しぶりに思った通りのことをさせてもらったのですが、最近はこういう撮影が少なくなってきてしまったんですね。
自分のことを表現できる場、自分の感性だけでやれる場がなくなってきていることを思うと、「いまの子たちはかわいそうだね」という話を、撮影の合間にみんなで少ししました。
でも私は、願っていれば、それができる場所を自分で作れるのではないかと思っています。
そのためにも、願いを声に出すことですね。

こういうことを考え始めたのは、1年ぐらい前から始めた瞑想がきっかけだったようにも思います。
瞑想をすることで自分に向き合えるようになり、心を休めることと、物事に集中することができるようになりました。
それまではマルチタスクで、いろいろなことを同時にやっていたのですが、そうすると全然進まないし、逆に時間がかかってしんどくなってしまう。
でも、自分と向き合う時間をとったことで、「これがいちばん」「いまやることはこれで、それは次」というように順番を決めて、やるべきことに集中していけるようになりました。
ですからみなさんにも、常に自分と向き合って、自分の気持ちや環境を振り返る時間をとっていただけたらなと思います。

── 楽しみながらお仕事をする素晴らしさと、夢を叶えるためのヒントがたくさん詰まったお話をうかがいました。ありがとうございました。

「SUPER BIDO」は、初代山野愛子が提唱した「美道5大原則」の理念にのっとり、美容の理論と実践を通して、変わりゆく多様な文化の足跡を残すべく立ち上げたプロジェクトです。世界で活躍するアーティスト、山野学苑OBや在校生の作品のほか、同学苑で行っているさまざまな取り組みをご紹介しています。また、各界で輝くさまざまな人々を「美容」というキーワードで繋ぎ、盛り立てていくことで、美容業界の発展に貢献することを目的としております。

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