SUPER GRADUATE

PUNK ATTITUDE

ALBUM
鶴田望
NOZOMI TSURUTA
──今回のテーマは「PINK」ですが、作品のイメージやモチーフは、どういうことを考えていらっしゃいましたか。

テーマとしては「PINK」ということで、メイクをする子のことも考えたとき、最初はちょっとガーリーっぽい感じでいくのかなと思っていたんです。
でも、こういう撮影では正面から写すイメージが強かったので、フロントショットで映えるスタイルは何かなと考えました。
ふだんは顔周りのカットをしているので、自分の武器という意味でもそれで表現したいなと思ったので、そのスタイルを出すことにしたのです。
現場に来てからファッションをパンク系にすることになり、「これはこれで合わせやすい」と思ったのですが、そこから意外といい感じに合ってくれて……という感じですね。
なので「PINK」と言われたときのイメージを、自分のやりたいスタイルで表現しました。

──今回はお打ち合わせも直前で、衣装なども現場でご覧いただくことになってしまいましたが、それらも作品のヒントになったのでしょうか。

そうですね。
まず現場でカットしていいのかわからなかったので、それも込みでどういうスタイルにするかを考えていました。
仕込みの段階でウィッグをカットして準備をしていたのですが、当日「カットしていいよ」と言われたので、現場でファッションを決めてから、持参した3つのウィッグから2種類を選んで作りました。
セレクトした衣装の色味などに合わせて、「ファッションはこうだから、顔周りの作り方はこういうふうに変えようかな」と、その場で考えていったのです。
エッジが効いたファッションなのに、ヘアスタイルがナチュラルだとちょっと違うかなと思ったので、「それならヘアスタイルもエッジを効かせたいな」という感じで調整していきました。
なので、前髪はあえてオン眉で作り、厚みなどもいろいろ調整して、ファッションに合うように持っていくことができたかなと思います。

今回に関しては、前日にお話をうかがっての本番だったので、どうにか現場で合わせるしかないというのが、自分のなかでありました。
でもそれは、お客様に対するのとやること自体は変わらないんです。
美容師は事前に「こういうお客さんが来る」なんてわからないので。それが苦かどうかと言うと、別にそうでもなかったですね。

──ありがとうございます。作られたスタイリングで特にこだわった点はありますか。

やはり、顔周りと前髪ですね。
今回のような撮影の場合、正面からのスタイルがいちばん印象が強いので、顔周りに何も作らないと平べったいスタイルになってしまい、あまりかわいくないんです。
それなら奥行きを出したいなということで、少し顔周りを作るだけでも全然違うかなと思って、エッジを効かせるために前髪をあえて短めに作ったりしたことが、自分のなかのちょっとしたこだわりという感じですね。

──鶴田さんの在校中には、「SUPER BIDO」はあったのでしょうか。

始まる前でした。
自分は69期だったので、ギリギリなかったと聞いています。
だから、今回この案件をいただいたときは、「SUPER BIDO」自体を知らなかったんです。
「いま、こういうのがあるんだよ」と聞いて、「あ、そうなんだ」と。

──「SUPER BIDO」に参加することになったときは、どう思われましたか。

何をやるのかな、と。
だから、いちばん不安だったのが、これまでの過去の作品を見せてもらったときに、「こんなクリエイティブなもの、俺はいまは作れないぞ」と思いました。
うちのお店はクリエイティブというより、どちらかと言うとナチュラルとか、王道スタイルみたいなものが鉄板になっているので、ずっとそっちばかりをやっていたので、久々にこういうクリエイティブ寄りの、ちゃんとした撮影をやりました。
ふだんウィッグなどは作らないので、「うわっ!」と思いましたね。

──そうなんですね。では、はじめて「SUPER BIDO」をご覧になったときの印象はどんなものがありましたか。

いいなと思いました。
自分が在籍中にこのプロジェクトがあったら、やってみたいと思うタイプだったので。
学生のうちからこういう環境で学べるのが、うらやましいなと思います。

──ありがとうございます。ここからは作品以外のことについてうかがいます。美容の道に進まれたきっかけは、どんなことだったのでしょうか。

最初のきっかけは、親戚に美容師がいたことです。
本当に小さい頃から手伝いもよくしていて、気付いたら「美容師になりたいな」「こういう姿になりたいな」と思うようになっていました。
山野美容専門学校を知ったきっかけも、叔母が卒業生で、この学校を教えてもらったからです。
自分は出身が東北のほうなので、「美容師をやるんだったら東京で」「東京へ行くんだったらヤマノに行きな」という感じでした。
だから、その親戚がいちばんのきっかけかなと思います。
小さい頃から見ていて、いいなと思っていましたし、逆にそれ以外にやりたい職がなかったのです。
だから、もしいま美容師をやめることになったら、何をやるんだろうと思います。
ヘアや美容系には携わっていたいなとしか思わないですから。

──ご親戚の方からの勧めということのほかに、山野美容専門学校を選んだ理由はありますか。

きっかけは叔母だったのですが、東京に出たいという気持ちもありました。
東京で知っている美容学校は何カ所かあったのですが、そのなかでも、施設としてもここはすごく充実していますし、いちばん興味を惹かれたのが、1学年あたりの人数がすごい多かったこと。
それがいちばん強かったかなと思います。
東京の美容学校には「激戦区!」というイメージがあったので、高め合える人ばかりいるんだろうなと想像していました。
そのうえでオープンキャンパスに行っていろいろな話を聞き、「ここがいいな」と思ったのが、それ以外のきっかけという感じですね。

──人数が多いことをプラスに捉えていただいたようですが、マイナスに考える方もいらっしゃいますよね。

人数が多いと、見てもらえないんじゃないかという不安ですね。
自分のなかでは、人数が多いから全員でバトルするというよりは、人数が多いからこそ、そのなかでも一握りは絶対に意識が高い人たちはいるはずだと。
そういう人たちと付き合って、高め合いたいというのがありました。
だから学生の頃は、課外活動もいろいろとやっていたのですが、コンテストクラブで知り合った子とは、いまでも定期的に会って、近況報告会みたいな感じでお互いに高め合っています。
自分にとってプラスになる人たちに出会えてよかったですし、そういう友だちに会える環境としては、すごくいいと思います。

──在校中の思い出で、印象に残っていることはありますか。

コンテストクラブがいちばん印象深いですね。
意識が高い学生がすごく多いので。
自分たちの代が、コンテストクラブの1期生だったんですよ。
1年生の後半くらいに選抜試験のようなものを受けて、「受かればコンテストクラブに受け入れます」という感じで始まったのです。
自分は選抜試験に落ちてしまったのですが、それでもやりたかったので、「隅のほうで聞くだけでいいから」という感じで混ぜてもらって、ずっとやっていました。
それから結果を残して、メンバー入りしたのです。
芸術祭の本大会ではダメだったのですが、学内予選ではカットの部で優勝することができたので、コンテストクラブの活動がいちばん成長できたし、いちばん思い出深いところだったと思います。

──いまに至るまでのご経歴をおうかがいします。卒業してすぐALBUMさんに入社されたのですか。

そうです。
入社して最初の半年間は研修期間でいろいろな店舗を回ったのですが、そのあとは銀座店で働かせてもらいました。
その後、2022年の7月にオープンした池袋店のオープニングスタッフとして異動しました。

異動にあたって、もともとそんなに多かったわけではないのですが、銀座でずっと来てくださっていたお客さまの何人かが来なくなってしまったのは、自分のなかでつらい部分もありました。
でも、池袋に移るタイミングで、ブランディングやSNSの使い方などを改め直す機会を作ったのです。
それがきっかけでSNSのフォロワー数などが伸び出してからは、楽しくなりましたね。
だから、異動してよかったなと思うところもあります。

──では、ふだんお仕事をされるうえで、大切にされていることはありますか。

当たり前すぎることになってしまうのですが、プロ意識でいることは第一に考えていますね。
「アシスタントの子」「スタイリストの子」というのは、スタッフ側から見たらわかりますが、お客様からしたら、アシスタントの子もスタイリストも、「美容師さん」という印象ですから。
お客様にはその両方を「美容師」と伝えていますし、そういうときのプロ意識──「お客様がいまどう思っているのかな」「どう感じているのかな」と考えること。
お客様のいまの環境に気を配り、何かつらいことはないだろうか、と。
あとは、「この人は会話をしたい人かな」「話したくない人かな」といった空気の読み方ですね。
人間観察になってしまいますが、そういうことはすごく意識しています。

──そのおかげで、お客さまにとって居心地のいい時間になるのだと思います。では、将来的にやってみたいことや、夢などはありますか。

もう5年間、美容師をやっているのですが、自分の引き出しをもう少し増やしたいという気持ちがあります。
自分はずっとヘアを担当しているので、メイクとかもできるように。
今回のようなヘアメイク系も、もう少し力を入れていけるようになるといいのかなと思ったりします。
美容師だけで収まるのではなく、美容に関することに幅広く手をつけていきたいですし、それができる人になりたいなと思っています。
美容師兼、みたいな感じですね。
技術ももちろんですが、何よりも自分の引き出しを増やしたい。
メイクができる人はすごいなと思いますし、それこそ今回の現場でも、撮影のやり方などを見ていて、「撮り方次第で写真がこんなに変わるんだ」というのがありましたから。
レスリーさんはどういうことを意識しているのかなと思いました。
あとはスタイリストさんからも、服装の組み合わせや装飾品のつけ方など、「こういうのをつけるんだ」「服ってこういう着せ方もアリなんだ」という感じで、自分のなかにもっと引き出しを増やさないといけないなと思い知らされた部分がありましたから。

──最後になりますが、美容業界を目指す後輩たちに、ひと言お願いいたします。

美容業界に憧れを持って入ってきてくれる子たちがいっぱいいるなかで、リアルな話になってしまいますが、生活リズムとか、いろいろとても大変です。
でも、いま輝いている人たちは、そういうすごく大変な時期を乗り越えたからこそ、めちゃめちゃ輝いているのかなと思います。
美容業界に足を踏み入れるとき、最初は圧倒的な圧もかかってきますし、実際に1年目の子からも「やっぱりしんどいなぁ」という悩みもたまに聞いたりします。
自分もしんどい時期がありましたし。
でもそれを乗り越えたからこそ、いま美容師をやっていて、めっちゃ楽しいんだなと思います。
お客様からも、「美容師って大変じゃないですか」「忙しくないですか」と言われたりしますが、自分は心から「楽しいです」と言えるから。
本当に楽しいと思える仕事なので、大変な部分もあるけれど、輝ける自分になるための第1歩を踏み出して欲しいです。
それを越えたら、絶対輝ける自分がいます。
だから、そこに来るまではがんばって欲しいですし、自分も美容業界を盛り上げていきたいと思っています。

美容業界は、どうしても辞めがちになってしまうんですよね。
でも、最低2〜3年は続けないと、見えないところはあると思います。
それを乗り越えられたからこそ、その楽しさがありますから。

──継続することで見えてくる楽しさがあるのですね。本日は、長々とありがとうございました。

「SUPER BIDO」は、初代山野愛子が提唱した「美道5大原則」の理念にのっとり、美容の理論と実践を通して、変わりゆく多様な文化の足跡を残すべく立ち上げたプロジェクトです。世界で活躍するアーティスト、山野学苑OBや在校生の作品のほか、同学苑で行っているさまざまな取り組みをご紹介しています。また、各界で輝くさまざまな人々を「美容」というキーワードで繋ぎ、盛り立てていくことで、美容業界の発展に貢献することを目的としております。

検索

Copyright © 2020 – 2024 Super BIDO All Rights Reserved. Site Designed by Jetset Inc. and crft