Issue.01

ANGEL ★ DEVIL

大平 拓朗 TAKURO OHIRA

どんなことをイメージして作品を作られたのですか?

「Fantasy」で思いつくものと考えたとき、映画にもこういうタイトルの作品があったなということと、僕のなかで衣装のイメージも起こしやすかったんです。また、人間は誰しも“天使”と“悪魔”の両方の面を持っているんじゃないかと思ったのもあります。今回の撮影では3スタイル手がけたのですが、1つ目は割とナチュラルな天使と悪魔にし、ハーフ&ハーフで徐々に完成していくというイメージで作りました。ですから、最後に撮影した2枚目のスタイルが、両方ともそれぞれに染まっている感じです。衣装さんのお力を借りて、いいものができました。

 

作品のなかでこだわった点はどんなことですか?

柔らかさと硬さが同居しているスタイルなので、シルエットで整えて、でも質感は違う、という点です。最後のスタイルは、天使のほうが前髪を下ろしていて、悪魔のほうは完全に立ち上げているリバーススタイル。相反するものでありながら、正面から見たときにバランスがいいものを作ろうと思っていました。シルエットはやはり大事ですね。また、左右で質感を完全に変えようと考えて、右側は強いカールを入れて天使っぽい柔らかい感じに、左側は昔の“スジ盛り”のイメージでスプレーをかけてアイロンをするという、パキパキのスタイルにしました。普段のスタイルでは絶対にやらないんですが、ギザギザしていて、トゲがある感じに見えてよかったかなと思います。お客様にはナチュラルな、生活に合わせたスタイルが多いので、こういうスタイルを作ることはまずないですね。

 

レスリーさんが撮影された作品を見ての感想をうかがえますか?

画角によって見え方が変わるということですね。3スタイル目が完成したとき、天使の側から撮影すると、天使でしかないんです。何も知らない人が完全に右に振り切った作品を見たら「白いスタイルを作ったんだな」と思われたでしょうね。正面を向いた写真を見てはじめて「これはハーフ&ハーフだったんだ」と気づくだろうなという撮り方もされていて、全部で9パターンのスタイルのように見える。僕はそこまで考えていなかったので、撮り方やライティングを変えたらまったく別物に見えるんだなと思いました。とても勉強になりましたし、僕が想像していなかった作品が見られたので、感動しました。

 

ここからは、作品以外のことでうかがいます。なぜ美容の道に進まれたのでしょうか?

最初は、人と関わる仕事がしたかったからです。おしゃれにしたいとか、かっこよくなりたいとかではなくて、人と対話する仕事がしたかったというのがあります。デスクワークではなくて、自分が思うことを表現したり、それを人と共感し合ったりという仕事がしたかったんです。それを探したら、美容師だったという感じです(笑)。

 

たくさんの学校のなかから、山野美容専門学校を選んだのはなぜですか?

僕は長野県出身なので、都会感があるところに憧れがあったので、東京に行こうとは決めていました。入学前に何校か回ったのですが、山野美容専門学校は校舎が新しくなったばかりで、すごくきれいだったんです。また、高校生のときにアルバイトをしていた美容室のオーナーさんが、山野美容専門学校の出身だったんですよ。それもあっていちばん最初に見学に来て、ここかなと思いました。

 

学生時代の思い出をうかがえますか?

僕は高校のときに生徒会長をやっていたんですが、割とさぼりがちだったんです。でも、山野美容専門学校では、無遅刻無欠席の皆勤でした。ヘアショーにも出ましたし。そのとき一緒にやった後輩が別の美容室でスタイリストとして働いていたり……美容師って、辞めてしまう人も多いんですが、そのなかでも僕とかかわっていた人たちは、表参道〜原宿界隈で美容師を続けている人が多いので、今でも繋がりがあります。授業ではないイベントもあり、舞台でソロで歌ったりなど、いろんなことをやったので、いろいろな人とかかわったな、と思っています。

 

普段、お仕事をするうえで大事にされていることはなんですか?

結婚式場を作りたいと思っています。メンズにフォーカスされている結婚式場ってなかなかないんですよね。僕も結婚しているんですが、式を挙げたときも、女性のスタッフさんが多くて。でも男性にとっても一生に一度のことなので、その瞬間を、その人のいちばんの思い出の髪型にしてあげたい。男性も女性もお互いに最高のヘアスタイル、最高のルックスで式を挙げられる空間を作れたらと思っています。さらに、僕は映像も好きで、自分でも製作しているんですが、映像も写真と同じく形として残せますよね。美容師は、両方できたら最強なんですよ。ヘアは洗ってしまうと残らないので、「すごいな」と思える映像を撮って編集して、あとで振り返ったときに「よかったな」と思ってもらえるようなものを作りたいと思っています。なので、映像制作会社と結婚式場を作りたいですね。TikTokやInstagram、YouTubeも、写真や映像が残るもの。これからは、幼いときからそういう映像をたくさん見て育つ子が増えてくるので、クオリティが求められてきていますよね。そういうなかで、どんなものが響くのか考えていかないといけないなと思っています。

美容師って何にもとらわれない職業であり、何をやってもいいと僕は思っていて、それがいちばん面白い。だから、キツいですけど、辞めたいと思ったことは一度もないですね。それこそ、僕は8年美容師をやっていますけど、今回の撮影のようなことはやったことがなかったので、すごく勉強になりました。

 

最後に、美容業界を志す後輩たちに一言いただけますか。

美容師の道は、絶対に楽ではないんです。でも、自分の知識や技術で人をハッピーにできる仕事というのはなかなかないですし、「ありがとう」と言われる仕事もなかなかない。感謝してもらえることが目標ではないんですが、そういう存在になれる仕事は魅力的だと思うので、がんばってほしいと思います。
 

What was your inspiration for this design?

I think within all of us is an angel and a devil. For this photoshoot I took a natural approach to the styling and gradually worked on each side. I paid close attention to the silhouette and the details on each side. On the last page (page 20), the angel’s hair is down while the devil’s hair is up. I loved working with the idea of balance and conflict. For this style I used strong curls and flat iron techniques incorporating hard and soft textures that you would normally never see together.
 

Now, I’d like to learn about you. What is important to you in your work?

I try to create a style that defines each client. With a new style, my client can feel like a new person. Through trying new styles, I hope I can help them find an improved version of themselves.
 

What was your inspiration for this design?

I think within all of us is an angel and a devil. For this photoshoot I took a natural approach to the styling and gradually worked on each side. I paid close attention to the silhouette and the details on each side. On the last page (page 20), the angel’s hair is down while the devil’s hair is up. I loved working with the idea of balance and conflict. For this style I used strong curls and flat iron techniques incorporating hard and soft textures that you would normally never see together.
 

In conclusion, what words of advice do you have for aspiring hair stylists?

Of course, basic knowledge, technical skills, and the ability to make people happy are very important. Although we don’t practice our craft for the gratitude, it is an amazing feeling to be appreciated. Please do your best to become a beautician that will be appreciated by many.