白雪姫を作品のモチーフにした理由を教えてください。
R
まずは、「誰もが知っているものはなんだろう」と考えたとき、ディズニーを思い出したんです。そして今号のテーマである「ICON」には「何かを代表するもの」というイメージがあったので、ディズニー初のプリンセスでもあり、私が個人的に好きだった白雪姫を選びました。
白雪姫やディズニーといえば、ハッピーで少女らしいイメージがあると思いますが、私は逆にプリンセスがいちばん大変なとき──毒リンゴを食べて倒れた瞬間を強調したらどうなるんだろうと考えて、そこからハッピーエンドへ展開していく作品にしたのです。
作品のポイントと、撮影に参加した感想を教えてください。
R
メインの作品は、毒リンゴを食べて生死が曖昧な状態。グリッターもつけて、いちばん手をかけています。ふたつ目は、王子様のキスで生き返った様子を、ボブヘアーと鼻やチークに血色感を出すメイクで生き生きと表現しました。最後のパターンは、森のなかで遊んでいる様子で、さらにハッピーなイメージです。活動的な編み込みのヘアスタイルと、興奮を表す赤いチークで活発なイメージに仕上げました。ストーリーとしては、メインの作品から始まっているんですね。1度死んで、生き返って、また以前のように遊ぶという流れなので。
モデルさんは、「すごく美しいな」というのが第一印象でした。全体的な肌の質感などもとてもきれいな方だったのですが、目周りの皮膚が薄く、ファンデーションがシワのなかに入ってしまい、何度も修正することになってしまいました。
衣装は、白雪姫の活発さを表した素敵なものをたくさん用意してくださって、感動しています。リボンは、最初は赤を考えていたのですが、前日にレスリーさんやスタイリストさんともご相談して、水色になりました。おかげで学生の作品それぞれに違いが出たので、とてもよかったなと思っています。
結果的に、私の頭のなかにあったものをそのまま再現したような、イメージどおりの作品ができあがりました。
今回はチームで作品を制作しましたが、チームワークはいかがでしたか?
R
今回、みんなとはじめて会ったのですが、はじめてなのに仲間として受け入れてくれる感じがとてもうれしかったです。今回以外にもたまにチーム活動があるのですが、それは、LINEなどでやりとりをしながら仲良くなれる機会。クラス以外でもサークル活動のような感じで交流ができるんです。
できあがった作品の写真を見て、どう思いましたか?
R
写真を見たとき、実際よりも発色感が収まる印象があって、私の技術的にもう少し発色させたかったなと思うところと、逆に照明のおかげで馴染んでいてかわいいなと思ったところ、両方があります。
撮影のとき、レスリーさんのオーダーでモデルさんがスカートを振っていたのですが、その一瞬を撮る技術がすごいなと思いました。写真で見ると風が吹いているように見えるものもあり、動きのある感じになって、森のなかという印象が強くなっているんです。自分では思いつかなかったイメージが引き出されて、うれしかったですね。動きによって背景まで感じられる作品にしていただきました。
ここからは、作品以外のことでうかがいます。美容の道に進もうと思ったきっかけはなんですか?
R
小学校3年生のときから美容師、それもメイクアップの道に進もうと思っていました。韓国ドラマで主人公がメイクアップアーティストのものがあって、それを見たのがきっかけです。働いているシーンの主人公がすごく輝いて見えて、「この仕事はすごくかっこいいな」「私もなりたいな」と思って。そのときはただ憧れていただけですが、中学生になってダンス部の子にメイクをしてあげたり、高校に入って専門の仕事を習ったりするうちに、「自分によって人が変わるってすごく楽しいな」と気づいたんです。
また、きっかけとなったドラマのセリフに「メイクは心のなかの傷も隠してあげることだよ」というものがあったんです。私は唇に傷跡があるのですが、メイクをするとそれが薄くなって、スマイルにも自信が出ます。メイクをしたあとは自分自身に強さを感じるので、ドラマのセリフのとおりだなと思うのです。今日のモデルさんは本当に美しい方でしたが、さらにコンセプトに合わせてメイクをするだけで、とてもキャラクターが強くなると感じて「やっぱりこの仕事は楽しいな」と再確認しました。
美容専門学校ではなく、山野美容芸術短期大学を選んだのはなぜですか?
R
YAMANOという名前は知っていましたが、最初は短大の存在を知らなかったんですよ。でも、調べたときに短大があることを発見して「ここ、いいな」と思ったのです。短大の卒業資格証が得られるのがいちばんのメリットでしたが、海外研修旅行なども充実していましたから。英語もしっかり勉強でき、教養科目もあって、美容だけを学ぶのではないところがとても興味深かったです。
学生生活の楽しいところ、苦しいところはどんなところですか?
R
私は単位を全部取っていますが、学校がおすすめするものは全部受けようと思って、それ以外の外部活動もやっています。たとえば「コンソシアム」という異世代交流会──これは70〜80代の方とおしゃべりをして彼らの考えや悩みを知る活動で、実際に美容ボランティアにもつなげていきます。また、就職に向けてのサポート活動である「特進クラス」は、マーケティングやホテル業界のシステムなど、美容業界以外のことも多く学べる活動なので、すごく得になっています。
ここでは学校側が、学生ひとりではできないような場所や機会を与えてくれているんですね。ただ、その最中に課題や試験、レポートの締め切りなどすべてが重なる時期があって、そのときは「つらい、つらい」となるのですが、全部終わったときにはスッキリ感と一緒に「やっておいてよかった!」と思うんです。「自分のためになったな」「履歴書に一文でも書けるな」と思いますね。
将来の夢はなんですか?
R
影響力のある人になりたいです。美容の先生になって、フリーランサーのような形であちこちを回りながら、私の経験や技術をほかの人たちにも伝播していきたいなと。今回、奈良先生たちのお仕事を見て、私もこうなりたいなと、すごく憧れました。
MACやMAKE UP FOR EVERなど、社内のメイクアップアーティストを海外に行かせている企業がありますが、そういう形でどこかの企業に所属しつつ、出張の機会がたくさんあるようになるといいなと考えています。「私はここの所属です」という看板を背負って、そこに「(小野リエ)」と明記されているような立場ですね。そこからどんどん成長して、看板自体が「小野リエ」になる日を夢見ています。