Shogo Kariyazaki

假屋崎省吾さん
Shogo Kariyazaki

K 「私は好きなことがいっぱいあるんです。やることがありすぎて、毎日時間が足りません。時間というのは1日24時間で、みんな平等ですよね。その24時間をいかに使うか。それがうまくできるかできないかが人生の分かれ道かなと思います」

そう語ってくださったのは、華道家の假屋崎省吾さん。日本のみならず世界中で高く評価され、国際的に活躍されている假屋崎さんは、長年にわたって繊細かつ大胆な“美の極致”を表現されています。美輪明宏さんから「美を紡ぎ出す手を持つ人」と評されたその裏側には、多忙な中でも日々を楽しむアクティブな姿勢がおありのようです。

K 「私は美しいものが好きなんです。そのひとつが音楽で、クラシック音楽──特にピアノが好きです。弾くのも聴くのも好きで、コンサートにもうかがいますし、たくさんあるCDを片っぱしから聴いたりもします。また、最近ニューヨーク・スタンウェイの百数十年モノのピアノを購入したのですが、それが本当にタッチも音色もいいので、嬉しくてしょうがないんです。

音楽のほかには、料理も好きです。三度三度、なるだけ素材がいいものを使いながら、自然のものをいただくようにしています。お花を育てるのも、旅行するのも好きですし、海外のテレビドラマを見るのも大好き。飼っている犬や猫は癒しの存在ですし、ストレス解消にもなります。本当に趣味が多すぎるんです(笑)。ですから、どうしても時間がなくなってしまいます。

そしてなにより、私にとっては仕事が趣味なんですね。そういう点からすると、我慢してお仕事をしている方も多くいらっしゃるなかで、すごく恵まれていますし、幸せだなと思います。仕事は一生懸命やればやるほど、自分に返ってきますから」

心を潤わせる時間と、楽しみながら仕事をされる姿勢があってこそ、多くの人を魅了する作品が生まれるのかもしれません。假屋崎さん独自の世界が広がる美しい作品は、どういったことから発想を得られているのでしょうか。

K 「お仕事をするうえで、デザインやアレンジを考えなくてはならないのですが、そういうインスピレーションが生まれる元は、どこにでも転がっていると思うのです。もともとインテリアや建築が大好きなので、たとえば山野ホールにうかがうと、その空間や舞台裏からもさまざまなものを感じます。目に見えるもの、触れるものには本当に素敵なものがたくさんあるのです。そういったことからインスピレーションを受けて、それを自分の作品に生かすこともよくあるんですよ。旅行もそうですし、地に足のついた毎日の生活のなかでも、刺激を受けることはたくさんあります。芸能人としてテレビに出たりもしていますが、私自身は本当に普通の人間という意識が強くありますし、もともと芸能界に憧れて入ったわけではないんですね。たまたまご依頼を受けて出演したところから始まり、次々にお声がかかってもう二十数年になってしまいましたが、変な言い方ですが、『いつ足を洗っても大丈夫』というくらいの感覚なんです」

音楽や舞台、ファッション、歴史的建造物などと多様なコラボレーション作を発表されている假屋崎さんには、ご自身の経験から築かれた信念があるとおっしゃいます。

K 「生きていると、さまざまな課題に当たることがあります。そういうときに取る道のひとつは、さっさと早めに諦めること。『これは自分に合わないな』と思ったら、ドツボにはまる前に引き上げるんです。そうしないと時間の無駄ですし、その分、好きなことややるべきことに費やしたほうが絶対にいい。でも、それもまずはやってみないとわからないですよね。ですから、挑戦することが大事だと思います。それで『自分に合う』と思ったら、とことんやるのが私の主義です。私はとても決断が早いんです。瞬間的に決めて、あまり後悔をしません。何か失敗したとしても、2度と間違いを犯さないようにと反省はしますが、くよくよせずにどんどん前に進むようにしています。プラス思考の塊なんですね」

常にご自身を信じ、前向きに進んでこられたからこそ今のお姿があるのでしょう。と同時に、決して忘れてはいけない大切なこともあるそう。特に若い人たちに伝えたい、“大切なこと”とは──?

K 「情熱を持つこと、夢を持つこと、そして努力をすること。惰性で続けるのではなく、目標や夢を掲げて、そのために頑張るということでしょうか。そこは諦めないで頑張ることが大事です。たった1回の本番のために、何もかもを犠牲にできる方は抜きん出てきますよね。そのためにも、基本的な技術はおろそかにしてはいけません。基本を身につけるから技術が磨かれていきます。美容の世界のみなさんもいろいろとイメージをお持ちだと思いますが、それを表現するのに、技術というのは最も大切なことでしょう? でも、技術だけ先行してもダメで、個性、キャラクターが必要。長い間には挫折もあると思うのですが、いつまでもくよくよせずにパッと切り替えて、別の目標や新しい夢を見つける努力をすることも大事です。若いうちは、たくさん栄養を吸収しなくてはいけない時期。一見美容と関係ないようなことでも、長い目で見れば栄養になっているのです。私は、技術とはそういうものだと思います」

そんな假屋崎さんが心に留めている「美道」とは、どんなものなのでしょうか。

K「私は、いつも『花は心のビタミン』と言っています。おいしいものをいただけば体の栄養はとれるのですが、『心の栄養とは?』と問われたら、私にとっては花なんですね。花って、すごくパワーがあるんです。美しいものには強いパワーがあり、私はそれに魅せられています。いくつになっても飽くなき探究心で、美に向かって進んでいく──これが、自分で切り拓いていく『道』と考えています。最初は先人が作ってくださった道を歩むのですが、いつしか自分でその道を切り拓いて、作っていく。それが『美道』というものだと思っています」

美を探究していくことは、年齢性別を問わず誰にでもできること。こうしてひとりひとりが「美道」を追究し続けていくことで、世界が少しずつ輝いていくのかもしれません。